単身世帯率No.1のフィンランド

「ひとりで暮らす、ひとりを支える」(青土社:2019:高橋絵里香)

千葉大学の先生によるフィンランドでの長年のフィールドワークをまとめたもので、興味深い内容でした。都市部ではなく人口の少ない島しょ部なので、地域問題もかなり含まれています。北欧というと福祉大国のイメージを持つ人も多いですが決してそうとも言い切れない。ちなみに国連の報告では最も単身世帯率が高いのはフィンランドで41%!とのこと。文化・社会背景も複雑なので(日本のような独立島国と欧州は全然異なる)独自の問題も多々あります。田舎ゆえの融通のきく介護サービスも、国全体の市場化のあおりを受け、日本同様に「マネジメント」「効率化システム」が導入されつつあり、現場のケアワーカーのジレンマも。どうもこういう考え方は、人口集中の都市部をもとに考えられ作られるので、隣の家まで20分とか、島ばかりが連なる自治体、では現実的ではないのですね。日本だって同様。地方分権という言葉を都合の良いように使い分ける中央にどこの国も同じようです。

経済と政治と命の値段

「新自由主義の暴走」(2020:早川書房/ビンヤミン・アッペルバウム)

600頁近い大書でしたが賢くなった気がします(笑)。米国がこの50年ほどでいかに政治と経済学者がからみあってきたか。当初は「経済学なんて」だった考えが、みるみる政治に活用(ときには悪用)されてきた流れがわかります。中でも驚いたのは「命の値段」。さまざまな制約(規制)のために、経済学的に人の命の値段と経済便益をはかる手法で決められた。日本のニュースでもよく「経済効果が〇〇円(増えた・減った)」という表現がありますが、いつもどうやって計算してるんだろうと思っていましたが、なるほど。それにしても命の値段が政治的に使われるとは恐ろしい。「高齢者は先が短いから一般的な命の値段から37%割引するべき」論まで出て(◎_◎;)、さすがにAARP(全米退職者協会)が猛反発!などの話もありました。実は日本ではオープンになっていないだけで、舞台裏では行われているのでしょうか。あとがきの「社会を評価する基準はピラミッドの頂点ではなく、最低辺にいる人々の生活の質だ」という言葉が響きました。10年後、20年後、世界はどうなっているでしょう。

社会保障をきちんと学ぶ

官邸参事官を含み厚労省で長らくお勤めされ現在大学の先生をされている方の社会保障本です。読み始める前は、国寄りの内容だろうなと思っていたのですが、予想外にニュートラルというか、社会保障の重要性を論理的に解説してくれていました。そのためには「負担」も必要であること、所得再分配の適正化が必要であることなど、タイトルにあるように「教養としての」がわかると思います。どうエクスキューズしてみてもあらゆる格差が拡大していて、とどまるところを知らない現在。「なぜ社会保障なのか」は、私自身かなり遅まきながら(;’∀’)、リカレント大学で小中時代に学んだ「社会」をきちんと学ぶことで歴史的に理解が進んだと感じています。ITや外国語の学習に力を入れる最近の子どもの教育ですが、本当は社会保障を学ぶことが基礎の基礎という気がします。「現役世代の負担が大きい、貧困や高齢者は自助が足りない」と思っている方は一読してほしい内容です。311から10年、「社会保障」の根底を考えさせられます。

 

 

任意後見制度もメリット・デメリットあり

また成年後見制度の話でしつこくてスミマセン(;’∀’)。「任意」後見制度をきちんと確認しておこうと、リーガルサポート発行の本を読んでみました。ただ2007年初版なのでちょっと古い。先般5回にわたり記載した「闇」の部分と相いれない内容もあり(リーガルサポートは司法書士さんの団体なので裁判所寄りですね)、どうかなーと思うところもあったのですが、ただ新たな発見も多々ありました。個人的に任意後見は親の介護を心配する同世代の方には勧めていますし、私自身老母の任意後見受任者です。ただ、、やはり実際面倒くさいことが多い(-_-;)。そして若干リスクもある。法律のことなのできちんとせねばならない。このあたり2019年の裁判所の「家族がやりやすい後見制度」方針がどれぐらい現実的になるのか次第ですが…。超私見ですけど、任意後見契約は保険、できれば使わずにすむようにすることが一番(;’∀’)。

成年後見制度は充分理解を(5)

5回続けて「成年後見制度の闇」(2018:飛鳥新社)を参考に記してみましたが、書き足りないことがまだいっぱいあります。気になる方は本を読んでみてください(ただしこれが全てではないことは理解して)。この本の良かった点は、ちょっと恐ろしい事例が多いのですが、あわせて「原因・課題」と「対策」「必要な政策・施策・制度」も提起している点。特に危険回避のための「対策」は非常に参考になります(私も即実行しようと思いました!)。少しまとめますと(重複しますが)、①法定後見は子がなれない確率が高い(ヘタすれば本人と家族の人権が侵される)、②そうならないための対策を元気なうちに親子で考えておく、③万が一想定外の後見が開始されたら即刻できる対策を講じる(時間が命)。著者が提案しているポイントの中で2点、これから制度としてぜひ進めてほしいものあがります。ひとつはまったく第三者機関による後見相談(客観的に人権を守るために正当に判断してくれる)、もうひとつは、後見人の固定報酬ではなく、限定後見(不動産を処分するため、金融機関と取引するため、施設と契約するため、など)にして、1回の行為に報酬がいくら、とすることも可能にすること。私もこの2点は有意義と感じます。つくづく「法律」とは我々を守るためにあるだけはない、ということに今回は驚愕しました。

*補足:2019年に「後見人になりうる家族がいる場合は家族を優先して後見人にする」「使い込み等ない限り辞めさせることができなかった後見人を交代できるようにする」ことが方針として出されました。今後の実績データを追ってみます。

成年後見制度は充分理解を(4)

「成年後見制度の闇」(2018:飛鳥新社)を読んで

本にはたくさんの事例が書かれています。若干誇張があるとしても、現実にありえると思います。ちなみにAmazonの書評では、家族側からの意見が多く「自分も近いことがあった」などの意見が見られる反面、★1も(おそらく同業者?)あります。事例を読んでいて、自分自身恐ろしいと思ったのは、いかに法関係者の権力が強いのか。いったん決まると覆すことが不可能、あるいは異常な努力がいる。結論からいうと「極力成年後見制度は使わない」です(笑)。特に法定後見。私は法定後見は思うように家族がなれないことを理解していましたが、一般の方はまだまだ知らないし、自分はそんなことない、と思っている人が多いのではないでしょうか。高齢夫婦の夫の認知症のために妻が後見人になろうしてなれず、生活資金まですべて弁護士に管理されるようになった例、子どもたち(兄弟姉妹)で意見が分かれ、1人の子が一方的に後見申し立てをして他の子を排除してしまった例、すでに子や親族が後見人としてしっかり報告もして数年経過していたのに、ある時突然家裁から「横領の可能性があるので監督人をつける」と一方的に通知があり、監督人に報酬が発生した例、日常的に子が親の介護をしていたのに「虐待だ」と通報され自治体が一方的に親を措置で連れ去り法定後見人をつけた例、など事例にいとまがありません。普通の日常がある日突然「?!」ということが起こる場合もあるのです。<続く>

成年後見制度は充分理解を(3)

「成年後見制度の闇」(2018:飛鳥新社)を読んで

職業後見人には、おもに弁護士、司法書士、社会福祉士がいます。では、介護や福祉に詳しいか?社会福祉士はもちろん知識はありますが、法律家はかなり難しい。高齢者や障害者の後見をするということは、財産を守ることと身上監護(身体や生活を守る)です。それをその後見人に託していいのか?法定後見の場合は、後見人を申立者が選べません(推薦は可)。職業後見人は家裁にリストアップしてもらい順番待ちをし、適当に順番が回ってくる(?)。自分達の一生がそんなに安易に決まってしまう。後見人は本来、本人や家族と面談や会話をして状況を把握し、本人の権利を守って支援し、年に1度は家裁に報告をすることが仕事。しかし、年に1度の報告(財産管理)のみの人も多いのです。ちなみに私の知人にも職業後見人が数人いますが、彼らは真摯な対応です(その実態は過去にも何度か書きました)。本の中で堀田力氏(さわやか福祉財団、ロッキード事件の弁護士)が弁護士後見について「弁護士はリスクを避けるために施設に入れたがる…中略…成年後見にとって必要な人は、財産管理の専門家ではなく、福祉の専門家。成年後見は福祉の分野であり、本来は法律家でなく行政が担当すべき。やる気のない弁護士を後見につけないよう、国民一人ひとりが自己防衛を図る必要があります(33頁)」と仰っています。<続く>

 

成年後見制度は充分理解を(2)

「成年後見制度の闇」(2018:飛鳥新社)を読んで

私のセミナーでも「後見制度」の話はよくしており、過去にも何度と書きましたし、私は実親の「任意後見人受任者」です。セミナーで話す理由は、万が一親が認知症になって成年後見人が必要となった場合、子がなれないケースが多いため、「事前の任意後見契約がベター」ということをお伝えするため。裁判所のデータが物語っています。本制度が開始した2000年、後見人は子が9割程でした。最近は1割強、他親族を含めても2割強です。ほとんどの人が認知症になってから「法定後見」を家裁に申し立てますが、家裁は子の横領を防止するために、1000万円以上(東京は500万円以上らしい)の金融資産がある場合、職業後見人(弁護士、司法書士等)を任命する。いったん決まると、余程のことがない限り一生続き、全ての権限が後見人に移ってしまう。当然毎月報酬が一生発生。最低でも月2万円。親の年金で子供が世話をしたいと思ってもいちいち後見人にお願いしないともらえない。一般的に職業後見人から生活費10万円という暗黙のルールがあるらしいですが、介護サービスやその他利用で不足する家族がとても多い。問題は①法定後見では家族が後見人になれるケースが少ない、②職業後見人には一生報酬が必要(財産が多いと報酬も増える)、③本人・家族が後見人の許可なくお金やその他を自由にできない。<続く>

成年後見制度は充分理解を(1)

「成年後見制度の闇」(2018:飛鳥新社)

読み始めてから胸がザワザワしました(;´∀`)。考えることが多いので、何回かに分けて記してみたいと思います。まず基本として、とても参考になる内容なのですが、反証も踏まえる必要があります。私もまだまだ制度の勉強を進めようと思います。ただ、この中の事例は、私自身一般人から「大変困っている」と相談を受けたり、知人の後見業務をしている専門家からも業界の問題を多々聞いているので、あながち誇張ではないと思っています。制度トラブルを、本人・家族側から書いた内容ですが、逆に本当に本人・家族にとって第三者の後見人をつけなければ命や生活の質に関わるというケースもあります。100%本の内容を受け取ってしまうと、「後見制度は怖い、悪い」「職業後見人(弁護士や司法書士)は悪徳ばかりだ」となりかねないことは危惧しますが、反面、悪徳後見人及びその周辺を固める裁判所や自治体の「ワナ」にはまると地獄です。それは私自身もリアルに聞いている。と、前置きが長い1回目ですが、何回かに分けてポイントを語ってみます。高齢者ご本人、高齢者を持つ子世代、一読をお勧めです。

 

MCIのさらなる分化

「老年期の心理査定と心理支援に関する研究」(2020:渡辺恭子)風間書房、50

一昨日の続きで話はがらりと変わり、最近一般的になってきた軽度認知障害(MCI)は、研究上さらに分解されて、軽度から重度に移行する傾向がわかってきたようです。アルツハイマー型認知症に移行するのは、MCIでも記憶障害があるタイプがもっとも多いそうです(まあ当然ですよね)。ところが、Non-aMCI(記憶障害がない)タイプでも、アルツハイマー型への移行は多く、レビー小体型や前頭側頭型への移行が推定されるとのこと。うーむ、結局軽度でも重度になる可能性は低くはないということですね。研究データによって若干異なるようですが、MCIから認知症に移行する率は年間10~15%のようです。それにしても、さまざまな認知症スケール(検査)がありますが、私なんかは、どれを試してもボーダーラインに引っ掛かりそうに思いますけど(苦笑)。そんなに検査の内容、覚えてられません(;´∀`)。