養護老人ホーム(2)

「高齢者の生活困難と養護老人ホーム」(2019)より

昨日の続きで「養護老人ホーム」の話です。驚くことに、地域包括支援センターや福祉関係の担当部でも養護老人ホームを知らない人が多いそう。介護保険施行以来、高齢者への福祉は介護保険ありきになってしまっていることがよくわかります。さらに、社会保障改革で、かつては施設整備費(これは特養も同様ですが)は、国が1/2、都道府県が1/4、社会福祉法人が1/4と、公的な部分が負うところが多かった。しかし、さまざまな改革の中で、最終的に、この補助は一般財源化されたため、市町村は措置に使いたくない(事務手続きもややこしく、詳細は除きます)。それよりも、国が1/2負担してくれる「生活保護」にして、サ高住などに「入れてしまう」ほうが、ラクであり市町村の財源を棄損しない(端的に言ってしまうと)、という流れなのですね。これを「措置控え」「措置渋り」「措置離れ」などと揶揄されています。こんなことになっているとは、驚きました。昨日記したように、養護ホームへの入所者は介護以外に何等かの課題を抱えている人がほとんど。サ高住への入居で「福祉」の視点はあるのか、が問われます。河合先生のご著書はいつも読み応えのある書籍です。ブログに記してしまうと極端なところだけになってしまう懸念があるものの、高齢期の生活・暮らし・住まいの問題は、とてもとても大きく底が深いと思います。

「養護老人ホーム」のこと

読書シリーズです(;’∀’)。これは衝撃でした。高齢者の住まいの分類の解説を長年している中で、「養護老人ホーム」は特段説明に入れていません。理由は「措置」だからですが、自分の理解もその程度しかなかったのだと痛感。2000年前後、介護保険開始前後に養護ホームに伺ったことがあります。老朽化した施設でしたが、諸事情に困った高齢者が暮らすにはよい制度と思っていました。しかし、これも構造改革のあおりでさまざまな問題が出ています。養護ホームは介護の有無に関係なく、何らかの生活困難(経済的・社会的)を持つ高齢者のための施設で、自治体が措置(救済)として入所する施設。全国に975施設(2017年)しかありません。入所者(入居と言わず入所)は、精神障害を抱える人が少なくなく、知的障害、被虐待、セルフネグレクトなど、単に経済的困窮ではなく、自立生活が難しい状態の人が多くなっています。老人福祉法による老人福祉施設に位置付けられますが、施設は増加しないだけでなく、入所率が7割程度?と少ない。なぜこんなことになっているのか、措置の人が少なくなっているはずがないわけで、介護保険施行や社会保障改革が大きなきっかけとなっているのでした(続く)。

昔は冬より夏が危険だった

出典:「あたらしい家づくりの教科書(新建新聞社:2016)より

先日、エコ&健康な家についての本を読んでいて、お?!と思う内容がありました。今では冬場のヒートショック、つまり浴室と脱衣所の温度差による体調の急激変化が問題とされ、家庭内事故でも浴室における「溺死・溺水」死亡が年間7千件を超える勢いです。ところが、100年前は圧倒的に夏の死亡者が多かった。吉田兼好は750年前に「住まいは夏の暑さを考えてつくりなさい」と言っていたそう。原因は書かれていないのですが、社会状況が全然違ってきたことと、超高齢者の増加ゆえではないかと個人的には思うのですが、欧米でも同様に夏・冬逆転現象がおきているそうです。しかも、冬場のこの事故は、世界的にも寒冷地より対策が遅れている温暖地のほうが多い。確かに冬の北海道は家の中はどこも温かいですものね。ということは、いかに冬場の「寒暖差」が暮らしにとって危険なのかがわかります。ひとつ勉強になりました!

どこで最期を迎えるか

第1作目「病院で死ぬということ」で知られる医師の山崎先生のご本(2018)。外科医→ホスピス病棟→在宅ホスピス診療所(現在)という医療現場の内容で、想定以上に重かったですが、読んでよかったです。介護や高齢者事業業界にいる方、高齢世代本人、その家族、が知っておくべきことが多いと思います。政策としても在宅看取りを推進する中、我々一般国民も避けては通れない終末期のこと。費用的なこと、課題、実例、スピリチュアルな問題、etc.、広く網羅されている内容です。本筋から少しずれるのですが、「ホームホスピス」(民家で終末期の5人程が集住し、緩和医療と介護の24時間チームの支援を受けながら看取られる)は、現在制度化されているわけではなく、行政指導は「有料老人ホーム」の届出を必要とするとのこと。でも、がん末期患者中心ですから「高齢者」とは限らないし、老人ホームとはまた違う種類のもの。「制度が後からついてくる」の実例です。現在は未届け有料老人ホームとされているところが多く、こういう問題もあるのだなぁ、と。これから社会変化はもっと著しくなります。追いついて行けるのでしょうか…。

未来自叙伝「98歳になった私」

2018年刊の本ですが最近読みました。最初の頁に「目が覚めて、しばらくはなにも分からない。何かに気がづいて、『なにに気が付いたんだ?』と思って、やっと『自分は今日もまだ生きている』ということに、気付いたんだということに気付く。」引き込まれて一気読みしました。途中ひとり声を出して笑うところが幾度とあり、このセンスすごいなと。98~99歳の間の話なのですが、著者の橋本治さんの未来自叙伝。未来の東京大震災後という設定で、リアルと空想が織り交ぜられ「あるある」!シニア世代は膝を打つのではないでしょうか。関係ない世代が同じことを言うと大問題ですが、年寄り本人の自虐は明るい。シニア世代自身が語ることは大切ですね。橋本治さんの代表作はかなり昔ですが「桃尻娘」。いわゆる団塊世代真っただ中の人で、共感する人も多いのではないかと思います。大変残念なことに、この本を出したちょうど1年後の昨年、70歳でご逝去されました。

余力のあるうちの住み替え

昨日の「老いゆく団地」の続きです。戦後の住宅不足の悲惨さは大学院時代の研究で調べていましたが、生々しい証言がたくさんありました。それはともかく、復興のための団地がたくさん作られた。でも老朽化や耐震の問題で後年建替えが必要になるわけですが、そのときにすでに80歳前後になっている高齢者の住み替え(団地建替え)がいかに困難な問題が多々あるか。経済的な面で家賃が上がるというのもあります。公営ゆえに入居条件も厳しく、夫婦で入居していた少し広めの部屋は、住み替えのとき配偶者がなくなっていたら一人用の狭い部屋に強制的になってしまう。一番の問題は、隣近所との関係が壊滅的になること。災害時の仮設住宅でも同様の問題が起こりましたが、さまざまなハードルがあって、もともとの隣近所と同じ所に住み替えができない。そうなると、住み替えて新しい設備のキレイな住宅に移っても、認知症やひきこもり、要介護状態、など高齢期特有の大きな問題が多発しているそうです。これは団地の問題であるものの、所有形態や家屋形態に関係なく、超高齢期の住み替えは非常に心身に負担が大きく、QOLを著しく下げる可能性が高いのですね。まだ余力のあるうちに住み替える、が重要です。

住宅政策の確執

「老いゆく団地」(2019、朴承賢)

先週読んだ本の一部ですが、ビックリな内容がありました。都営住宅の老朽化した団地の建て替えに際し、初期から住み続ける高齢者の課題を緻密なフィールドワークで描いたもので非常に興味深い内容でした。修士論文を書く際、戦後すぐの住宅政策で厚生省と建設省のバトル(;’∀’)を知りましたが、その赤裸々な言動が。長くなりますが、引用してみます。
「底辺の階層は置き去るんです。それは厚生省の管轄で建設省の所管ではない。建設省が考える公営住宅は最低辺の階層は相手にしない。その対策は厚生省でおやりください。私のほうは住宅経営だから、経営が成り立たないような、少なくとも一定の家賃が払える人でなければ入れませんよ、ということです。…貧窮人は切り捨てる。それはそうでしょう。(中略)将来、日本の再建に役立つ家庭の活力を養うためにやるこということではないでしょうか」(大本圭野:証言 日本の住宅政策(1991)からの孫引)。こんなこと今の時代に言ってしまったら大問題になると思いますが(;’∀’)、70年近く前のこの考え方は、今の国交省(政府)も全然変わっていないような。こういう思考が基底にあるので欧州の「居住福祉」は夢なのでしょうか。衝撃でした…。

日本と似てる?フィンランド事情

また本の話題です(^_^;)。日本では「北欧」と一括りにして社会福祉が充実の国と思われがちですが、北欧5か国はそれぞれまったく制度が異なります。個人的にはもっとも手厚いのがデンマークと思いますが、各国事情も背景も異なるので善し悪しは言えません。ところで、フィンランド。2009年に行ってきました。休暇でお気楽ひとり旅だったのですが、せっかくなので当時関わりのあった社会福祉法人がフィンランドと介護交流をされていたので、頼んで施設を紹介してもらいました。この話はだいぶ前にも書きましたが、また後日少し触れてみます。この本で驚いたのは、フィンランドの状況は日本が遅れて追っているという印象です。概略をいうと、①高齢化が急進(地域差が大きい)、②財源苦で民営化(市場化)、③軽度介護者のサービス外し、④福祉保健医療国庫支出金(日本の地域医療介護総合確保基金?)、⑤施設からサービス付き高齢者住宅への大幅シフト、⑥小規模事業者が減少し大企業に統合されグローバルな企業数社に絞られる、などなど…。今の日本で顕著になってきた状況が20~10年前のフィンランドの様子です。長くなるので続く…。

ウィルス感染とは

本の話題が続きますが、先月読んだ本「感染る」。慶應義塾大学の連続教養講座をまとめたもので、昨年の出版ながら「いま!」にぴったりの内容(^_^;)。ウィルスとは何か、ウィルスとの歴史的な闘い、拡大の数理、などなど非常に興味深い内容でした。新型コロナにまつわるフェイクや怪しい効果をうたう製品など出回っているようですが、信頼できるソースを確認することが大切です。ウィルスによる影響は、社会的弱者が真っ先に被ります。日本ではあまり話題になっていませんが、欧州ではすでにホームレスの困窮が取り上げられています。持病を持つ人が多く、感染ハイリスクにさらされる上、自粛の関係から支援団体の活動もストップせざるを得ない。シェルター閉鎖で住居の問題も大きい。リーマン後には失業による若者の居住問題が注目されました。今回じわじわと同様に出てくると思います。人権として「居住」は最低限保障してほしいものです。

無意識の偏見

読んでみました。最初高齢社会で先進国の財務や経済がどうなるかというマクロ経済の内容と思ったのですが、そんなカタイ(笑)モノでなく、高齢者マーケティングの本でした。MITの先生が著者。シニアビジネスに関わっている方には参考になるかも。事例が豊富です。自分でもなんとなく違和感を感じていたアレコレが、そうだったのか!と思う点もたくさん。たとえば、なぜ高齢者は自分が不自由なのに「補聴器」を使いたがらないのか。思うほどで改善しないということもありますが、根本的なモノあるんですね。介護も同様、『高齢者向けテクノロジーの場合、問題は『「利用者の身体的な不自由さ」を想定することではなく、「不自由なところをどうにか補なっていく」こと自体が目的になってしまっている』、まさしく!私自身含め、「高齢者とはこういうものだろう」というバイアスがかなり大きい。ではどうするか?たくさんのヒントがありました。痛いところ突かれました(;´∀`)。